OSCE(Objective Structured Clinical Examination)は、
OBA(Outcomes-Based Assessment)の Stage 2 にあたる試験です。
多くの日本人看護師は、OSCEを「英語で看護技術を見せる試験」「実技ができれば通る試験」とイメージしがちですが、この理解のままでは高確率で不合格になります。
OSCEは、
技術でも英語試験でもありません。OSCEは、オーストラリアの看護観に基づき、安全に看護を提供できるか」
を確認する試験です。
1. OSCEが導入されている理由
オーストラリアでは、看護師は医師の指示を待つ存在ではなく自律的に判断し、説明し、連携する専門職として位置づけられています。
そのため、書類審査や理論試験(NCLEX)だけでは確認できない、
- 実際の行動
- コミュニケーション
- 判断の一貫性
- 安全への配慮
を、模擬臨床環境で直接評価する必要があります。それを担うのがOSCEです。
2. OSCEの基本構造
OSCEは、複数の「ステーション(場面)」 を順番に回る形式で行われます。
各ステーションでは、
- 患者役(俳優)
- 医療者役
- 試験官
が配置され、現実に近い臨床シナリオ が設定されています。
受験者は、その場で状況を理解し、RNとして適切に行動・発言・判断する必要があります。
3. OSCEで評価される4つの軸
OSCEの評価は、「何をしたか」よりも「どう考え、どう伝えたか」 に重きが置かれています。
① Patient Safety(患者安全)
- 危険な行動をしていないか
- 感染対策・確認行動が取れているか
- リスクを早期に察知できているか
どんなに流暢でも安全を欠く行動は即マイナス評価になります。
② Clinical Reasoning(臨床判断)
- 状況を正しく把握しているか
- 優先順位は適切か
- RNの役割範囲を理解しているか
正しい判断でも理由を示せなければ評価される可能性は低いです。
③ Communication(コミュニケーション)
- 患者への説明が分かりやすいか
- 患者の同意確認ができているか
- 共感・配慮が示されているか
技術より話し方・伝え方が重要になってきます。
④ Professional Behaviour(専門職としての態度)
- 落ち着いた態度であるか
- 敬意ある言葉遣いをしているか
- チーム医療への意識があるか
「仕事ができる看護師」ではなく「一緒にチームとして働ける看護師か」 を見られている。
4. 日本人看護師がOSCEでつまずく理由
理由① 正しいことを「黙って」やってしまう
- 声に出さない
- 確認を省略する
OSCEでは言語化されない行動は存在しないのと同じになります。
理由② 説明が少なすぎる
- 日本では「察してもらえる」ことが多い
- OSCEでは「説明しない=不十分」と評価されます
理由③ 判断の共有が遅い
- 「もう少し様子を見る」
- 「自分で何とかしようとする」
- 「材料がそろってから報告しよう」
これは安全意識が低い行動 と評価されます
5. OSCEは“看護観”の試験である
OSCEは、
- 英語力
- 手技
- 経験年数
を測る試験ではありません。
OSCEは、「あなたは、オーストラリアの看護師として安全に働けるか」を確認する試験です。
そのため、日本で評価されてきた看護行動が、OSCEではマイナス評価になることもあります。
6. NCLEXとOSCEの関係性
- NCLEX:
頭の中の判断を確認する試験 - OSCE:
その判断を現場で再現できるかの試験
NCLEXに合格しても、
OSCE対策をしていなければ通りません。
7. まとめ
- OSCEは実技試験でも英語試験でもない。
- OSCEは安全・判断・説明・共有の総合評価をされる試験です。
- 合否を分けるのは技術より「オーストラリアの看護観」
- 日本人看護師に必要なのは行動の切り替えと言語化をすること
おまけ:OSCEで【必ず】評価される定型行動リスト
※これができていないと、内容以前に減点されます
OSCEには「自由演技」はほぼありません。
毎回・どのステーションでも共通して見られる定型行動があります。
A. 開始直後(最重要)
- 自己紹介:自分の名前・役割を名乗る
“Hello, my name is ○○. I’m the registered nurse looking after you.” - 患者の 本人確認(2 identifiers:名前と生年月日など)
- 手指衛生を 見える形で実施する
- プライバシーへの配慮を言語化する「I’ll close the curtain to maintain your privacy.」など
一番大事だと言われているところです。
B. 介入前(必須)
- 何をするかを簡潔に説明する
- なぜ必要かを一言で説明する
- なるべくわかりやすい言葉で説明する
- 同意の確認「Is that okay with you?」
「説明+同意」はOSCEでは1セットになります。
C. 介入中
- 安全確認を声に出す
「I’m checking your vital signs now.」 - 患者の反応を気にかける
「How are you feeling?」 - 異変があれば即共有・報告の姿勢を示す
D. 終了時
- 患者と結果の簡潔な共有をする
- 次の行動を説明する
- ナースコール等の安全配慮
- 感謝と声かけ
終わり方まで評価対象になります。部屋を出ていくまでということですね。
おまけ2:日本の看護を「OSCE用」に言語化する方法
日本の看護師は
「できているのに伝えていない」 ことが非常に多いです。
コツ:
頭の中でやっていることを、すべて短い英語にする練習をする。
ひとりごとを英語でいうようにするといいかもしれません。
日本の看護 → OSCE用変換例
例1:患者を気遣っている
❌(日本的・無言)
- 表情を見る
- そっと声をかける
⭕(OSCE用・言語化)
- 「You look a bit uncomfortable. Can you tell me how you’re feeling?」
- 「Are you ok?」
例2:安全を考えている
❌
- 無意識にベッド柵を上げる
⭕
- 「I’m putting the bed rails up to keep you safe.」
例3:状態を把握している
❌
- 頭の中で評価する
⭕
- 「Based on your symptoms, I’m a bit concerned about your condition.」
評価されるのは「行動」ではなく「~しようとしたという行動」
おまけ3:OSCEで【即NG】になりやすい行動集
※1つでも当てはまると致命的になる可能性が高いです。
❌ NG①:何も言わずに触る
- 説明なし
- 同意なし
そんな方は少ないと思いますがかなり失礼な態度に当たります。
❌ NG②:判断を共有しない
- 「様子を見る」
- 「後で報告する」
安全意識が低いと判断されます。小さなことでも状況が変わることがあったならその時に共有すべきです。
❌ NG③:正しいことを黙ってやる
- 声を出さない
- 確認しない
正しいことをしていてもOSCEでは“存在しない行動”扱いになります。
❌ NG④:日本式の遠慮
- 医師・上司への報告をためらう
- 自分で抱え込む
チームで働く一人のRNとして不適切な行動になります。
❌ NG⑤:患者を「受け身」に扱う
- 説明不足
- 選択肢を与えない
患者本人に決定権があります。
おまけ4:NCLEX思考をOSCE行動に変換するために
変換例①:状態変化
NCLEX思考
- 異常
- 早期対応
- エスカレーション
OSCE行動
- 「I’m concerned about your symptoms.」
- 「I’m going to inform the doctor immediately.」
- 「In the meantime, I’ll continue to monitor you closely.」
変換例②:安全確保
NCLEX思考
- 転倒リスクあり
OSCE行動
- 「You’re at risk of falling, so I’ll make sure the call bell is within reach.」
- 「Please let me know if you need to get up.」


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